舞台 海辺のカフカ
15歳の「僕」は、父親と二人で暮らす東京の家を出る。
自分の分身ともいえるカラスに導かれて「世界で最もタフな15歳になる」と心に誓って。
名前は田村カフカ。そう名乗ることにした。
四国・高松を目指す長距離バスでは、若い美容師のさくらが旅の友となる。
カフカには目的の場所があった。旧家の邸宅を改装した甲村記念図書館だ。
そこでカフカは、司書を務める大島、当主の親戚にあたる佐伯と巡り合う。
一方、東京の中野区に住むナカタさんは、猫と会話ができる不思議な老人だ。
戦時中に事故に遭って以来、自分の影が半分なくなってしまったらしい。
近所の迷い猫を探すナカタさんの前に、ジョニー・ウォーカーなる男が現れた。
男はナカタさんにある取り引きを持ちかける。
そしてナカタさんもまた、何かに導かれるように四国へと向かう。
トラック運転手の星野は、そんなナカタさんを放っておけず、高松まで乗せていくことにした。
どうやらナカタさんが探しているのは「入り口の石」というらしい。
星野の前に突如現れたカーネル・サンダーズは、すべてお見通しのようだ。
そしてカフカは、『海辺のカフカ』という歌にまつわる佐伯の過去を知る。
重なるはずのない時間、出合うはずのない人々は、いつしか一つの点を結びつつあった。
15歳の誕生日に父親と共に過ごした家を出る。そして四国で身を寄せた甲村図書館で、司書を務める大島や幼い頃に自分を置いて家を出た母と思われる女性(佐伯)に巡り合い、父親にかけられた“呪い”に向き合うことになる。一方、東京に住む、猫と会話のできる不思議な老人ナカタさんは、近所の迷い猫の捜索を引き受けたことがきっかけで、星野が運転する長距離トラックに乗って四国に向かうことになる。それぞれの物語は、いつしか次第にシンクロし……。